Friday, May 05, 2006

IKEAは家具界のユニクロ?


スウェーデンを本拠地にする家具メーカー「IKEA(イケア)」。日本への本格参入の第1号店がオープンとなりました(Webサイト)。場所は千葉県船橋で,あのスキードーム「ザウス」の跡地です。

店舗は巨大(写真)。ショールームに飾ってある家具を見て気に入ったら,セルフサービス・エリアで自分で品物をピックアップ。レジで精算するというシステム。ほとんどの商品は組み立て式で,自分で車で持ち帰るというのが基本。

その分お値段を抑えているとのことです。店内にはカートや,ショッピングバッグ,メモ用紙(ショッピングリスト)と鉛筆,メジャーなどが置いてあり自由に使えます。メモは商品がどの棚のどの列に置いてあるのかを記入するもので,これなしでは効率よく買い物できません。

しかし,セルフサービス・エリアはあまりにも大きいです。吹き抜け3階の巨大倉庫。ここで客に商品をピックアップさせるとは驚きの発想です。。

そんなアイディアはなかなかいいかもとも思ったのですが,現時点では日本市場ではなかなか難しい面もあるのではと思っています。IKEA,まだまだではないでしょうか。以下に細かな感想まとめてみました(長いです,お時間のある方のみどうぞ)。

  1. 初期のユニクロ戦略?
    IKEAの家具って,基本的に白/木目の商品が多く,どのショールーム・コーナーに行ってもあまり変わり映えなく,「え,ここってさっき見なかったっけ」とデジャブ感覚に陥ります。

    しかし商品は確かにお安く,悪いものでもありません。通販でいえばディノスよりはよくはないが,ニッセンよりはちゃちでないといった位置付けでしょうか。すべてがシンプルで,それなりの今どき感はあります。ただ特に変わったものやそんなに洗練されたものはありません。ちょうどユニクロといった感じなんでしょうか。昨今のファッション誌にあるようなモダン・インテリアを求める人には不向きと思います。

  2. 本当にみんな持ち帰ってるの?
    「ほぼすべての商品は組み立て式で持ち帰りが基本」(IKEA)。というけれど。本当にそれって可能?って疑問。例えばベッドやソファはまず無理です。特に普通乗用車では。それと混んでるときは,車の置き場は臨時駐車場になってしまい,そこまでバスでの送迎。つまりちょっとしたパーク&ライドです。問題はそこまでカートを使わせてもらえないところにあります。

    ん〜日本人あまり肉食ではないのでそんな遠くまでかついで運べませんー! 実際の光景をみても北米のホーム・ショップみたく元気に品物かついでいる人は皆無でした。

  3. 「日本市場独特の商品展開」(その1)
    日本人に合わせた品揃え,っていうけれど・・・
    本当にそうなのでしょうかと疑問でいっぱいです。例えばシステムキッチンの高さ(寸法状の)。明らかに背の高い北欧人向けの商品。北米のシステムキッチンよりも台が高く感じました。日本のお年寄りにはまず無理でしょう。北米のシステムキッチンでも日本人にはなかなか大変と言われてます。まあ使えないことはないのですが,例えば,背の低いお年寄りは肘が手首より下あるいは水平状態になってしまうんです。そうするとシンクで作業してるときなど水滴が肘を伝わって服や床にポタポタと・・・。

    こんな細かいことって実際に生活してみてはじめて分かることなのですが,ショールームでは当然分かりません。日々の生活でかなり「不快」要因になってしまう重要事項なのですが。

  4. 「日本市場独特の商品展開」(その2)
    店内には,インテリア小物を売っている「マーケット・ホール」というコーナーがあり,IKEAブランドのキッチン用品/カーテンなどが売られてます。しかし,例えばフライパンは,日本のものに比べ非常に重く,また浅いものがほとんどです。北欧では,ガスではなく電熱が主流だからでしょうか。

    また北欧の調理の主流はオーブンや鍋で,日本のような炒め物でフライパンを持ち上げて混ぜることはまずないのでしょう。油は浅く入れるソテーが主流で,揚げ物はあまりないので深いものはいらないのでしょう(ほんとうに日本の市場調査してるのかな,IKEAさん?)。

    カーテンですが,日本では,お隣が近いため,影さえも映らない「遮光率○○%」という商品が購入の目安の1つになってます。しかしIKEAには,そんなカーテンは一切ありません。お隣が100メートル以上離れている環境ではそんなこと思いもしないのでしょう。またカーテンのデザインもいまいちあか抜けないというのは私の気のせいでしょうか。変に東洋を意識したものもあるのですが,それはあくまでも北欧人の考えた東洋。そんな印象です。しかも薄く透けてるものを大量に並べてある。力の入れどころ間違ってる気がします。

そこそこ品がよく,質もよい画一的な商品を大量に売る,というのがユニクロの初期の戦略で,事実それが奏効してファーストリテイリングはかつてエクセレント・カンパニーと言われてました。ところがそれがやがて行き詰まり,ユニクロは,今,多品種/少ロット戦略。それでもなかなか苦戦しているようです(関連記事)。

北欧生まれの家具版ユニクロ。果たして日本でどこまでいけるのでしょうか。私としてはちょっとがっかりで,明日以降しきり直しです。世田谷通りのリサイクル家具店の方が安くてセンスよいものがある(常にではないですが)とも思いました。東急ハンズとディノスの商品も検討したいと思ってます。

今後どうなるのでしょう,IKEAさん。もっと日本市場を研究する必要があるのかもしれません。ザウスのようにならないことを祈ってます。