Saturday, May 13, 2006

人気急上昇中のビデオ共有サイト


今週の【US NEWSの裏を読む】はこんな記事となりました。

新たな巨大テレビ局?それとも無法地帯?---大ブレイクしたビデオ共有サイト『YouTube』成功の理由と課題掲載ページ
タイトル少し長かったですかね?

GW明けの第1週目でしたが,少し飛ばしすぎのスケジュールで,やっとこさで原稿書き終わりました。前回の「MySpace.com」(記事)の続編のような形ですが,このYouTubeも今,すごい勢いでユーザー急増中です。

ここ最近,試しにここに映像ファイルをアップロードしていたのですが,これがすごく簡単。驚きです。この簡便さがうけているようで,映像をとりまくコミュニティが形成されています。それも,米国の雰囲気ふんだんに醸し出す自由奔放な世界です。

「どのビデオがたくさん観られているのか」といったランキングに加え,「評価が一番高いビデオは?」「最も話題になっているビデオは?」といったランキングもあり,なかなかおもしろいです。

これらはYouTubeのスタッフが選抜しているのではなく,あくまでもシステムが自動でランキングしています。こうした,人の手を介さない手法で人々の関心のあるものがピックアップされていくという仕組みはこれからのメディアの在り方のようで大変興味深いです。

もちろん開放的な雰囲気なことからYouTubeには何でもありです。テレビ番組/映画を違法コピーした著作権侵害コンテンツやポルノ映像など・・といった具合。

前回の記事のMySpace.comと同じことがここでも起こっているというわけです。いわゆる日本でもよく言われる「ネット社会の悪」の部分です。しかし,どういうわけか,米国ではこの「悪」に対する反応が日本よりは鈍いような気がします。ともすれば「野放し」とも思えるような・・・。

これはあのかつてのNapsterについても言えるのかもしれません。訴訟によって市場から追放されるまでの数年間,Napsterは違法コピー音楽共有の温床になっていました。なんで米国ってそうなの? と思うのですが,これは梅田望夫氏の著書「ウェブ進化論」(私の関連ブログ記事)の一節を読むと氷解するような気がします。以下少し引用します。

日本の場合,(インターネットの)インフラは世界一になったが,インターネットは善悪でいえば「悪」,清濁で言えば「濁」,可能性よりは危険の方にばかり目を向ける。良くも悪くもネットをネットたらしめている「開放性」を著しく限定する形で,リアル社会に重きを置いた秩序を維持しようとする。 (中略) 米国が圧倒的に進んでいるのは,インターネットが持つ「不特定多数無限大に向けての開放性」を前提に,その「善」の部分や「清」の部分を自動抽出するにはどうずればよいかという視点で,理論研究や技術開発や新事業創出が実に活発に行われているところなのだ。--ウェブ進化論」=梅田望夫著(筑摩書房)

なるほど。と思ってしまいます。まさにGoogleに代表されるような企業の活動がこれにあたるのでしょう。話を戻しますが,あの当時,Napsterが広まったことで,音声ファイル圧縮フォーマット「MP3」や「PtoP」通信をはじめとする技術のイノベーションがありました。

そのころの音楽メディアはCDが中心。パソコンに音楽ファイルを保存するというのは,Napsterがなかったらこれほど急速に普及しなかったかもしれません。

その後には,アップルの音楽ダウンロード販売や,iPod,フラッシュメモリ・プレイヤー,そしてau/ドコモ/avex/オリコン etc.などが今展開している携帯電話向け楽曲販売などとつながってきたのだと思います。

何パーセントか(あるいは50%以上でも)違法性があるからといって,即座に全面否定しないというのが米国流のようです。少しでも将来につながる技術革新の可能性があれば,それを検討する,あるいは市場がどう育つのかしばらく見る。そんな姿勢が潜在的にあるのかもしれません。

もちろんその過程では人々あいだでさまざまな意見が飛び交い,激しい議論がなされて,やや面倒です。結論の出し方が少々遠回りで迅速な方法ではないとも思いますが,それは民主主義の宿命なのかもしれません。

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以上,実は先日,なかはらさんからいただいたコメント&メールの内容を熟考して,こんなブログ記事に至りました。少々自分の考えの方向性について悩んでいたのですが,すっきりしたような気がして感謝してます >なかはらさん。

ネット社会には功罪がありますが,私は「功」の部分を見つめて,世界で起こっている最新動向をレポートしていければと思っています(とまあ,そんな堅苦しいものではないのですが,技術者の方などに気軽に楽しんでもらえる読み物を提供できればと思ってます)。