Sunday, April 16, 2006

マネックスのセミナーと矢沢永吉


マネックス証券のセミナー「第一回 マネックス資産運用フェア」というのに行ってきました。場所は赤坂プリンスホテル。

開催前に近所のイタリアン・レストランでランチをとったのですが,そこで横の席に矢沢永吉氏を発見,そんなおまけ付きの休日でした。いやー,渋かったですよ。

矢沢氏,午前11時ごろでしたが食事もりもり食べてました。このレストランの名前と場所,ほんとはすんごく言いたいのですが(私もいまだ興奮状態なので),でも,ここ矢沢氏のプライベートな空間のようなのでとりあえずこのブログでは非公開といたします。

さて,マネックスのセミナーの話です。スポンサー企業はJPモルガン・アセット・マネジメント,HSBC投信,日興アセットマネジメントなどでした。

しかしこれら投信会社のセミナーもよかったのですが,目玉はやはり,(1)「マネックス証券社長CEOの松本大氏/渋澤健氏(渋沢栄一の孫の孫)など3名のパネルディスカッション」と(2)「伊藤元重氏(東大大学院教授/WBSにも出演する人=写真)の講演」でした(同氏研究室のWebサイト)。

前者は,「オルタナティブ投資」商品に関する対談でした。これは,株や債券といった従来の投資対象の以外のものに投資することで,「ヘッジファンド」とか,上場前の会社に長期投資し回収する「ベンチャーキャピタルファンド」,企業のリストラや買収機会を利用して資金提供し回収する「バイアウトファンド」などがあります。

マネックスの商品は,これを50万円から購入可能とし,これまでの富裕層限定商品から,我々一般にも提供できるようにしたというものです。

さて,私が今回で目玉と感じたのは実はこれではなく,後者の伊藤元重氏の講演です。大変おもしろかったです。

話がうまい,プロ!です。眠気も吹っ飛びますし展開もうまい。台本/メモもみずよくも1時間あれだけおもしろく話せるのか。「これで終わります」と言われたときは物足りなさを感じたくらいです。

その伊藤氏の講演。お題は「日本経済の現状と展望を探る」でした。

要点4つほどありましたので,以下にまとめました(思い出せる限りで)。お時間ありましたら,ご参考にしてください。

  1. 中国が日本経済をも支える
    世界の経済成長率は4%。これは1970年代の水準で,ここ最近(80年代/90年代)にはなかったほど高水準。それを支えているは中国(中国の経済成長率は10%)。日本は今1.7%だが,中国における外資系企業が中国で物を生産し,それを全世界に輸出しており,これが世界経済を支えている。

    もちろん日本企業もその恩恵を受けている。その中国の経済成長を支えているのは都市と農村の経済格差。人口10億人いる中,1日2ドルの生活水準が4億人,6ドル程度が2億人。これらが農村から都市部に出稼ぎ。彼らが中国の安い労働力構造を支えている。この構造はいつか破綻すると思うが,2010年くらにまではこの状態が続くだろう(伊藤氏)。

  2. インフレに要注意
    インフレは,過去10年以上も地道に稼いできた個人資産を一気に消失させてしまう——。オイルショック時(当時の物価上昇率はなんとほぼ20%)で,1970年代後半に定年退職した人はこの影響をもろに受けた。この経験から日本人は学んだ。そこで借金しても物を買う(例えば家)が正しい資産運用方法という考え方が定着した。

    しかしその後,バブル期とその崩壊が待っていた——。これによりインフレ時の資産運用手法は根底から覆った。多くの人が資産を減らすはめに・・この経験から日本人は学んだ。そこで預貯金が最も安全で正しい資産運用ということを学んだ。

    さて,今後は——。我々には3つの目を持つことが重要と言われている。それは全体を鳥瞰する「鳥の目」,そして細部にまで緻密に調べる「虫の目」,そして潮目を見る「魚の目」(「"うおのめ"ではありませんよ」と伊藤氏)。同じ状況はいつまでも続かない。変化する時代の流れを見極め,その時々に最も適した資産運用方法を考えることが重要となってくる。

  3. 金利について
    政府は5年後の金利を4%程度と見ている。しかしこれはある意味健全なこと。デフレからの脱却が伝えられ,マインドも景気回復に向かっている中,今の低金利が続くのは土地と株価の高騰を招き,むしろ危険。現在の1.9%でも異常な状態。今後金利が上昇していくというのが日本経済にとってもっともよいシナリオであろう(伊藤氏)。

  4. 資産分散/リスク分散(講演最後のエピローグ的な話)
    資産3分割(預貯金/有価証券/土地)は昔から言われているが,それは今でも重要。しかし,これからは4分割と思う。それはこれまでの3要素に加え,「人的資産」を加えたもの。自分が死んでしまってはもともこうもない。健康に気を付け,また情報収集や研究などを怠らず,自分の頭も鍛える。今の投資家にとってこの資産4分割が重要なのではないか(伊藤氏)。